Dear Prudence

哲学専修B4 間違いがあればご指摘いただけると幸いです。

アリソン「超越論的演繹」(1)『カントの超越論的観念論: 解釈と擁護』第7章

  • Allison, Kant's transcendental idealism: an interpretation and defense (pp. 159-162).

第7章 超越論的演繹

A90-91/B123で表明されているカントの心配事は、我々の明証的な認識とそれ自体としての現実との一致に関わるのではない。むしろ、感性の供給が思考のアプリオリな規則に一致しないかもしれないということが心配事なのである。したがって、カントの不安specterとは、デカルト的な懐疑論ではなく、認識の空虚さcognitive emptinessなのである。

B版演繹は二つの部分に分かたれる。第一部分(§15-21)は感性的直観一般の対象に関するカテゴリーの必然性を断定し、第二部分(§22-27)は人間の感性とその対象に関するそれを論じる。

[ヘンリッヒの解釈とそれに対する批判]

B版演繹を解釈するにあたっては、二つの部分がいかにして超越論的演繹の一つの証明をなすかということを示さねばならない。ヘンリッヒが定めたこの基準は広く受け入れられたが、彼の分析はそうではない。彼の解釈はこうである。第一段階は、すでに統一を有している感性的直観の範囲内において上記の不安を解消する。第二段階はこの制限を解除し、〈時空は統一であり(感性論で示されたように)、また我々のすべての直観は時空的であるという理由〉にもとづいてすべての人間の感性的直観がカテゴリーに従うということを示す。

この解釈に対する批判は、二点に集中する。第一は、〈悟性の働きと独立に直観がすでに統一をもっているという見解〉をカントに帰することについてである。これに対して、ヘンリッヒは、〈第一段階は、直観が統一を含む、つまり直観が統覚に関係づけられているという条件付きであって、第二段階ではこの関係が感性に与えられるあらゆるものについて肯定されるのだ〉と答えて立場を明確にした。しかし、これは、〈第一部分は第二部分で解除される制限的条件の下でのカテゴリーの妥当性を断定しているのだという想定〉を残している。第二の批判はこの点についてである。カントはこう明示している。第一部分はカテゴリーと感性的直観一般との関係に関わり、第二部分は人間の感性的直観の対象との関係に関わる、と。ここからして、ヘンリッヒに反して、第一部分は第二部分よりも広い主張を含むのである。

以上を踏まえて解釈上の問題をまとめよう。いかにして二つの段階が一つの証明を構成するかを示すのみならず、第二を第一からのトリヴィアルな帰結とみなすことを避ける仕方でこれをなさねばならない。